先週、理科研の小保方晴子さんが、万能細胞の一つである「STAMP」細胞を発見されたことが大きく報じられている。
この方面には不案内だが、勝手に思ったことを書いておく。
この発見の報を聞いて、最初に思い浮かべたた言葉は、この片桐ユズルの詩集の言葉「専門家は保守的だ」である。
彼の名は、現代詩手帖等で高校1の時に知っていたが、3年生のとき、ある政治組織に入ると、そこの一人に都立杉並高校の生徒がいた。
「片桐先生は、とても良い先生でした」と言っていて、やはりそうかと思ったのだ。その頃はすでに関西の大学教授になっていた。
さらに思い出したのは、1960年代に『太宰治論』の文芸評論家で、東工大時代から吉本隆明の友人の一人だった奥野健男の言葉である。
奥野は、大学卒業後東芝に入り研究者としてかなり長く勤務しその経験を活かして、文学評論の他、社会批評もたくさん書いていた。
その一つに「職場のお茶汲み反対論」があり、彼は「若い女性には職場のお茶汲みなどよりも、エレクトロニクス工場での手作業こそ彼女たちのみができる仕事だ」と書いていた。
当時はトランジスター等を作る過程で、ダイオードを基盤に貼り付けるなどの細かい手仕事が必要で、それは若い女性のみができることだった。
今はそうしたものが不必要になっているのだろうが、当時はそうで、多数の若い女性が工場で働いていたのである。
さて今回、ハーバード大時代に小保方晴子さんが最初に、この現象の発見をした時、多分彼女も非常に驚いただろう。
そして普通なら、「これは実験の手際の間違い」としてしまったと思う。
だが、彼女には、これを実験の間違いではなくありうることだする二つの理由があった。
それは、彼女が生物学に入ってから、そう時間が経っていないという、生物学の専門家でなかったこと。
専門家の常識には収まらない好奇心が、この大発見の原動力だったと思う。
もう一つは、実験の正しさへの確信で、これは日本人女性の手先の器用さによるものだったのではないかと思うのである。
確か、ノーベル賞受賞者の利根川進氏も、「実験、培養の数の多さが大発見を生む」というようなことを言っていたはずである。
この発見は、万能細胞の問題のみではなく、遺伝子の突然変異等の仕組みの解明にもつながるものではないかと思う。
ただ一つ頂けないのは、あの白の割烹着である。
本来は料理のためのものだが、戦時中は大日本国防婦人会の制服とされたものである。
千人針、出征兵士壮行会、慰霊祭等の軍事行事で日本女性が必ず着たのが割烹着なので、そこだけ少し不愉快になるのである。
戦時中のニュース映像の見過ぎだろうか。