昨日は、中央図書館で「映画『細雪』の戦後史」を行ったところ、満員の盛況でした。
来ていただいた皆さんにお礼申し上げます。
1950年、1959年、1983年と3回作られた映画『細雪』の一部を上映し、そこから読み取れる時代や主人公たちの生き方についてお話した。
それぞれ特徴があり、高峰秀子主演の1950年の新東宝版は、明らかに戦後民主主義で、自由奔放な妙子の生き方を肯定している。
1959年の山本富士子が雪子を演じた大映版は、いくつか見合いを繰り返すが、最後まで結局は結婚しないという不思議な結末である。
ここには、その前年にご婚約が発表され、1959年4月10日に行われた、当時の皇太子、現天皇陛下のご成婚が影響していると思う。
民主主義的思想が最高潮を迎えていたこの時期に、同時代に設定を変えていたこの映画は、原作の「華族の末裔」と結婚するというのは、作者たちは採用できなかったのである。
1983年の市川崑監督作品は、設定を過去に戻し昭和13年、1年間のことにしている。
そして、吉永小百合が演じた雪子は、電話が嫌いで、橋寺から掛ってきた電話にやっと出るが、あっさりと出会いを断ってしまう。
なんともすごいが、最後は華族の末裔の男と結婚することになるが、この末裔を演じるのが江本猛紀であるのが笑えるが、一切台詞を言わせないのは上手い。
作品としては、最後の市川作品が非常に美しく、演劇的な作りで、また水産技師を演じた小坂一也の場面など大いに笑え、最高だろう。
だが、見た方の感想をお聞きすると、市川作品は別格として、1950年の阿部豊作品の高峰秀子の演技と美しさが良かったとの声が多かった。
来週は、関内のさくらワークスでの『黒澤明 娯楽映画からの出発』なので、こちらもどうぞよろしく。