高名な三島由紀夫の小説の映画化である。こうした優雅な雰囲気の映画は、好みではないが、かなり言い出来だと思う。
ただし、一箇所だけ気になったのは、主人公竹内結子の婚約者がクラシック好きの軍人貴族で、SP盤を掛けるとマーラーの「第5番」が流れる。
大正時代初期にマーラーのレコードが、それも日本に輸入されていたかはかなり疑問である。勿論、日本版のマーラーのレコードなど絶対にない。
今でこそマーラーは大流行の作曲家だが、それは1970年代以降のことで、大正時代にマーラーを愛好していたとすれば相当に変わったクラシック・ファンである。三島の原作がどうなっているかは知らないが、多分違う曲だと思う。
そして感じたのは、竹内結子が結構きれいだったことで、さんざ悪口を書いてきた者としては変えざるを得ない。古風なものにはよく合う日本的な顔なのだ。