『てなもんや三度笠』は、1960年代に日曜日の夕方6時から大阪の朝日放送から放送されていた、大ヒット・コメディー時代劇だった。
関西では朝日放送だったが、関東では、当時のテレビ界のチャンネルの「ねじれ現象」から、大阪では毎日放送に相当するTBSで放送されていた。
TBSは、この「ねじれ現象」で随分得をし、テレビ朝日は損をしていたことになる。
ともかく、1960年代の日本の日曜日は、6時から『てなもんや三度笠』、そして6時半からは日本テレビの『シャボン玉ホリデー』という黄金の週末だった。
1961年にテレビの人気にあやかって作られた作品だが、主演の藤田まことと白木みのるで、東映で2本作られた後、東宝系で3本作られたという不思議なシリーズである。
多分、歌謡曲の司会をやっていたとき以来の関係だろうが、東映で藤田まことが主演したときには、彼は松竹(松竹芸能)の専属だった。
その後彼が、東宝と関係の深い渡辺プロダクションに移籍したので、映画も東宝系になったのだと思う。
ともかく、藤田まこと、白木みのるのコンビの他、いとし・こいし、大泉滉、平参兵、堺駿二、さらに花菱アチャコまで出ているが、全く面白くない。
ルーティーン・ギャグの
「俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカーではなく、あたり前だのあんかけ時次郎」と言うのだから少しも面白くない。
監督は、時代劇の多い内出好吉で、真面目に作っているが、喜劇的センスがまったくない。
もともと、沢島忠を除き、喜劇のセンスに欠ける東映京都では、当然とも言えるが。
テレビの作者香川登志緒と演出の沢田隆治は、共にアメリカ映画のミュージカルやマーチン・ルイスの「道中物」をイメージしていたのだから、東映のセンスではないのだが。
驚くのは、スタジオでの藤田まことと白木みのるのシーンがほとんどシンクロ録音であることだった。
アフ・レコの時間が散れないほど人気者で忙しかったのに違いない。
フィルムセンター