『最後の審判』については、2009年8月にラピュタで見た時、次のように書いた。
ラピュタの武満徹音楽特集、堀川弘通監督、松山善三脚本のサスペンス映画。
堀川のサスペンスものには、『黒い画集・あるサラリーマンの証言』の他、これと同じ仲代達矢と淡島千景が愛人関係の『白と黒』もある。
とても良く出来ているが、特筆すべきは脇役の良さで、加藤武以外はすべて俳優座の俳優である。永井智雄、東野英次郎・英心親子、田中邦衛、三島雅夫、袋正、矢野宣、浜田虎彦、小笠原良知など。出ていないのは、小沢栄太郎くらい。
1960年代の、東宝や東京映画の文芸作品は、ほとんど俳優座映画とでも言うべきキャステイングで、日本演劇史は当然として、日本映画史における、俳優座、民芸、文学座の新劇三大劇団の貢献は記憶されるべきことだろう。
話は、金持ちで美人の妻・淡島を持っている従兄弟の須賀不二男に嫉妬心を持つ愛人関係の仲代が、須賀を陥れ、淡島と結婚する方策を考える。
淡島に下心ある松村達雄を利用して、彼に淡島を誘惑させ、それを目撃した須賀に射殺の偽装をし、自分は羽田空港でアリバイを作り完全犯罪が出来たと思う。
だが、淡島と吉村実子の二人の女の裏切りで犯罪が露見する。
やくざの仲代がやっているビリヤード場は、大井町あたりらしく、東口に今でもある路地の飲食街を模したセットで芝居が行われる。
当然だが、武満の音楽が良い。
仲代が松村を射殺し、すべては上手く行ったと自分の店に戻って来たときにかかる曲。
後藤芳子が低く歌う『三月のうた』、作詞は谷川俊太郎。
この頃の堀川弘通のサスペンス映画のレベルの高さは、もっと評価されて良いと思う。彼は、黒澤明の弟子だったので、かなり良い作品を作って普通という評価だったのは、よく考えれば損していると言えるだろう。
これに特に付け加える事項はないが、この仲代の、セレブというべき須賀不二男への憎悪は、この映画が作られた1965年代では、あまりリアリティのあることとはみなされていなかったと思う。この貧富の差ゆえの犯罪は、原作のアメリカのことだとされたはずだ。その証拠に、1965年のキネマ旬報のベストテンでは、この映画には1票も得ていないのだから。
だが、近年日本もアメリカのような貧富の差の大きな格差社会になりつつあり、安倍政権はそれをさらに助長したいようだ。
こうした時にこそ、この堀川弘通が監督した秀作の意味はあり、その点では先駆的であったと言える。
日本映画専門チャンネル