『タンゴ・冬の終わりに』

芝居というものは、つくづく難しいものだと思う。

主演の三上博史は、1984年の平幹二郎の演技を見て、清水邦夫の劇に憧れ「いつか、できる年齢になったらやろう」と思っていたそうだ。

                             

1984年と2006年の演出は、共に蜷川幸雄で、今回は、行定勲だったが、出来は大変に問題だった。

1984年と2006年の、平幹二郎と堤真一の妻ぎんの役は、松本典子だったが、今回は神野三鈴で、彼女は良い女優だが、この役は違うと思えた。

松本典子のは、非常にクールに、夫で元俳優の主人公役の清村盛の狂気を見つめるものだったが、神野のは、大変に暖かくて、この劇の持つ甘美だが、冷酷な悲劇性には相いれないと冒頭から思えたのだ。

清村の手紙、実は妻ぎんが書いた偽手紙で、東京から新潟に呼び寄せられた若い女優は、1984は名取裕子、2006は常盤貴子だった。

名取は、「こんなに鈍い女優がいるのか」、常盤は「台詞が聞こえないじゃないか、蓄膿症を直してから出て来い」と思ったが、今回は倉科カナで、どうなのかと一応期待したが・・・書く気がしない。

主演の三上はと言えば、自己陶酔がひどすぎて、ファンではない私はシラケるばかり。

一番良かったのは、倉科の夫のユースケ・サンタマリアというのは実に皮肉。

要は、作品の持つ時代性や意味を理解できない人に、良い劇はできないということだろう。

パルコ劇場

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする