戦艦大和が、山ほど映画化されているのに比べて、同じ戦艦の武蔵を扱った作品は極めて少ないと思うが、その乗務員等へのインタビューによるドキュメンタリーである。
大和と同艦で、当初二号艦とされていた艦は、武蔵と名付けられて三菱重工業長崎造船所で竣工する。
そして、1944年10月、フィリピンのレイテ戦に投入される。
この戦いは、壮大な作戦計画で、大船団を緻密な計画の遂行で米軍主力を誘い出して殲滅するものだった。
だが、戦場では様々な間違いや予期せぬ事態が次々と起こり、計画通りには行かず、そして10月24日、米航空機の5回にわたる猛攻撃を受けて、その夜には沈没してしまう。
さらに、栗田艦隊の「謎の反転」もあり、フィリピン奪取計画は失敗する。この作戦については、様々な評価があるようだが、ここで実際に戦闘に加わった兵士たちの証言は凄まじいの一語に尽きる。
今回、初めて知ったのは、武蔵の沈没後、救助された乗務員は、フィリピンの島に上陸させられて戦闘させられたことで、ろくに弾薬、食糧もなしに戦場に投入された。これは、生き残った乗務員を抹殺して、武蔵沈没の事実を隠そうとしたとしか思えない。
さらに、ひどいのは、その飢餓戦の中で、人肉食が行われていたという証言である。
実際に人の肉を食べたかは、疑問もあるようだが、日本兵を撃って何かの物(例えばタバコ)を奪うという行為が横行していたのは、大岡昇平の『野火』のように、事実だったようだ。
誰がどう言おうとも、戦争は無意味な行為であり、絶対にやってはならないことは正しいというしかない。
一番被害を受けるのは、戦闘命令を出す偉い人ではなく、一番下の弱い者たちなのだから。
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