『実録・阿部定』

ユーロスペースの北欧映画祭で『むかし、むかし』を見ようと3階に行くが超満員で、全席売り切れとのことで、1階上がって田中登特集を見る。

                 

『実録・阿部定』は、1975年の公開時に見て、「これはすごい」と思った。

大島渚もそうで、川崎の映画館(たぶん駅ビルにあった駅ビル文化だと思うが)でこれを見てショックを受け、「日活ロマンポルノには敵わないと思い、ハードコアをやることにした」そうだ。

話は、言うまでもなく1936年に起きた「阿部定事件」で、2・26事件の裏というか、その社会の最底辺で起こっていた「猟奇事件」である。

全巻76分の作品で、たぶん90%は、宮下順子と江角英明のセックス・シーンばかりなのだから凄い。

50年ぶりに、さらに同じ題材の大島渚の『愛のコリーダ』を見た目でみると、作品の低予算性が目につくが。

二人がいた旅館の外を兵隊が通るシーンが何度か繰り返され、集団の隊列だと思っていたが、たった4人の兵隊である。

だが、舞台の木造の古びた旅館が非常に良いが、よくこの時期まで残っていたものだと思うが、群馬あたりだろうか。

坂田晃一の音楽も良い。

シネマヴェーラ渋谷

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コメント

  1. なご壱 より:

    阿部定
    私もこの日 シネマヴェーラでこの映画を観ました。昨夜読了した種村季弘編の「東京百話」人の巻に「阿部定事件予審調書ー第五回ー」が載っていて、阿部定の証言を読むとこの映画のストーリーとほとんど合致しているのに驚きました。脚本のいどあきおはこの文献を参考にしたようです。モナミのスープも出てきました。

  2. 『愛のコリーダ』と比較すれば
    コメントありがとうございます。
    大島渚の『愛のコリーダ』と比較すれば、予算的にも貧弱で、大島作品では軍隊の大行列が待合の外を通りますが、田中作品では、たった4人です。

    でも、『愛のコリーダ』は、今考えると晩年の大島渚作品では一番よく、それは田中登映画への対抗心だったと思います。あのプライドの高い大島のこと、「田中登などには負けるものか」という。