安政7年に大老井伊直弼(伊武雅人)が水戸浪士等に襲われて亡くなった事件を描く2010年の佐藤純弥監督作品。
佐藤はいつも期待を裏切られるので見ていなかったが、横浜駅西口のTSUTAYAにあったので借りて来た。
水戸藩の関鉄之助(大沢たかお)は、薩摩藩と結び、攘夷決行を約していたが、薩摩に裏切られ、さらに安政の大獄で自宅蟄居させられる。
密かに家を出て、江戸に行き、同志と結集して桜田門で、3月3日のひな祭りに登城した彦根藩の列を襲って井伊直弼の首を取ることに成功する。
だが、浪士側も死者が出たほか、残党も追われて捕縛される。
関は、指揮者の一人として襲撃そのものには加わらず、各地の攘夷派に好意を寄せる人を頼って逃亡するが、ついに捕まって斬首される。
佐藤純弥にしては、非常に淡々としたリアルな描き方で、作品の完成度が高いのは、やはり吉村昭の原作が良いせいだろう。
結局、権力者同士の無意味な争いに、常に下の者は犠牲とさせられるということがよく分かる作品である。
この事件は、幕府の権威を大きく失墜させ、明治維新へと向かわせた「義挙」として、明治以降は称賛されて、直弼は悪の巨魁とされて来たようだ。
だが、戦後は井伊直弼の政治的行為は、やむをえないもので歴史的な意義があり、彼は見直しされて舟橋聖一の小説になり、大河ドラマの第一作の『花の生涯』にもなった。
安政の大獄と言い、井伊直弼の業績の評価はなかなか難しいようだが、水戸藩を義挙とするような一方的なものではないようだ。
『新幹線大爆破』と並び、佐藤純弥の代表作になるだろうと思う。