途上国ほど最新の技術が入る アジア・ポピュラー音楽講座・西アジア編

昨日は、サラーム海上さんをお迎えし、「アジア・ポピュラー音楽講座・西アジア編」を南区しみん活動多文化共生ラウンジで行った。

初めに、92年に行われたウォーマッド92から、中村とうようさんの今回の趣旨の説明の後、パキスタンのカワーリーのヌスラット・ファテ・アリ・ハーンのライブを見た。

ヌスラットは、1987年の初来日以来、3回来て、日本中に大きな感動を与えたが、本来は来る予定だった福岡アジア文化賞へは結局病気で来なかったそうで、この1992年の来日が最後の日本公演になった。

さて、サラームさんは、先週までインドに行っていたそうだが、インドではお財布携帯がどこでも使用されているとのこと。

というのも、インドではタンス預金の調査と洗い出しのために、新紙幣への交換が行われているそうで、それもあってお財布携帯が急速に普及したとのこと。

一般に、新技術は途上国ほど早く普及するといわれている。

例えば、交通を考えれば、近代西欧社会では、鉄道、道路、港湾、空港と発展し、日本もほぼそうだった。

だが、途上国では鉄道や道路を整備するよりも、いきなり空港を作った方が安価で便利になる。

また、電話でも、膨大なケーブルを国中に敷設するよりも、高い鉄塔を立てれば、携帯電話は可能になるので、中国等の大きな国では急速に携帯電話が普及した。

サラームさんからは、実際に彼が現地に行き、撮影した映像、MTV、さらにネットの映像などで、イラクからイスラエルまでの古典と細心の音楽までもが紹介された。

中で、個人的にはエジプトの大女性歌手、ウム・クルスームのライブ映像には非常に驚いた。ユーチューブからのもので、大オーケストラを従えての歌唱で、LPは持っているが映像は初めて見た。

さすがの貫禄の歌唱だなと思った。昔、英語を習ったときに、ケネディの平和部隊でエジプトでクルスームのライブを見たことがあるという先生の話を思い出した。

公演は夜9時ごろから始まり、夜中まで彼女は歌う。そして一旦彼女は家に帰るが、観客はずっと劇場で待っている。

そして、明け方にクルスームは舞台に戻ってきて再び歌うというのだ。

昔、小泉文夫さんは、「クルスームの公演の翌日にはカイロの人間のすべてが彼女の歌を口ずさんでいる」と書いていたが、どうも本当のことのようだ。

実は、サラームさんも、小泉文夫さんのラジオ番組で世界中の音楽を聴き好きになったとのこと、それは私も同じだった。私の場合は、小泉さんの前に、作曲家柴田皆雄先生の現代音楽の紹介があったのだが。

サラームさんのお気に入りはトルコのようで、カッパドキアの音楽フェステイバルは非常に面白そうだった。

まだ、2回目だが、例の奇蹟のカッパドキアで行われているフェスティバルで、そこにそこに相応しいジャンルの音楽を中心にした音楽祭とのこと。映像で見ても非常に興味深い音楽祭のようだ。

また、ジプシー音楽の最新のトリオのタクシン・トリオは非常に素晴らしい音楽だった。そこではエレキ・サズーが使われていた。

このように、伝統的な楽器をエレキ化して新しい音楽を作るのはインドから西アジア全般でよく行われていることだが。

トルコは実は多様な音楽があるそうで、これはトルコが中東地域で唯一、政教分離、世俗化を早期にとった国だったことが原因だとのこと。

だが、今のエルドアン首相は逆戻りをさせていて、それがISのテロを生むなど、非常に問題の政権であるとのこと。

最後はイスラエルのジャズ・トリオで、基本的にジャズだが、どこかイスラエル的というか、東欧のクレッチマー的なところが面白い。

ともかく、「アジアは一つではなく、どこの多様である」ことを改めて確認した。

「アメリカ、ファースト」のおかしさの極限の大統領も出たが、まさに世界をなにも知らない愚か者というしかないだろう。

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