『海抜0米』

1964年の松竹作品、教師の倍賞千恵子が東京下町の女子高校に赴任してきて、京都での修学旅行から始まる。そこでは岸久美子の盗癖が描かれる。

日本の学園ものには、『坊ちゃん』と『青い山脈』が大体の元だが、もう一つあり、『若い人』である。これは、主人公の先生が女性だが、『若い人』に属するものである。

岸久美子の母親は幾野道子で、町でバーをやっている。また、中村晁子が不良少女で、不良仲間と付き合っている。この辺は、『若い人』によく似ている。

『若い人』は、戦前に豊田四郎の監督、大日向伝と市川春代、夏川静江で大ヒットした作品で、コケットリーな市川春代が演じた江波恵子は、大評判で春代現象というブームが起きたほどで、戦後も2回リメイクされているが、西河克己監督、石原裕次郎、浅丘ルリ子、吉永小百合の日活作品の出来が良かったと私は思う。

0米地帯とは、昔は東京の下町について言われたもので、錦糸町などで撮影されているが、川崎の渡田や横浜の鶴見でも撮影されている。

監督の川頭義郎は、名の通り川津祐介の実兄で、木下恵介の弟子だったので、抒情的なやさしさが身上だが、あまりうまくまとめていないと思える。

唯一笑えたのが、不良少年の田村正和が、少女とキスすることろで、場所が木場である。あの大島渚の『青春残酷物語』で、川津祐介が桑野みゆきを貯木の丸太から突き落とし、ぐったりとさせてセックスする場面である。ここでは、田村正和が、少女(申し訳ないが美人とは言えない女優だが)とキッスした反動で落ちてしまう、大島作品のパロディーだろうか。

女生徒の人気者だった川津祐介は、幼なじみの女性と結婚し、倍賞は、これまた中学時代からの知り合いで、精神科医になった園井啓介と結婚していくことが示唆されて終わる。

どうにもばかばかしい作品だが、この程度では、テレビの学園ものと変わりないできである。

衛星劇場

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