1973年、日活がロマンポルノに移行した後、藤田敏八が東宝系のプロダクションで作った作品で、併映も同じ日活の沢田幸弘の石原裕次郎主演の『反逆の報酬』だった。
だが、この強力2本立ては、ヒットせず横浜東宝の巨大な館内はガラガラだった。
映画は面白く、多分藤田の中では、秋吉久美子主演の『妹』と並び、一番良いものだと私は思う。
以前から私は、藤田敏八・ベケット説をとっている。途中までドラマがなく、主人公たちが遊びに終始し、最後いきなり破局になる、と言うのはベケットの『ゴドーを待ちながら』に大きな影響を受けていると思う。
この映画は、脚本が松竹等で娯楽作品を書いて来たジェームス・三木なので、起承転結がはっきりしていて、その意味では、いつもの藤田作品とは違うドラマ性があり、そこも魅力である。
また、穂積隆信、内田朝雄、殿山泰治等の脇役も、伏線が張ってあってうまくできている。
最後、本牧埠頭で、原田芳雄、大門正明、桃井かおりの3人が警官隊に銃撃されて殺されるのには、公開当時には、全く思わなかったが、今見ると明らかに前年に起きた連合赤軍の浅間山荘事件の影響がある。
とにかく特筆されるのは、樋口康雄の音楽の良さである。
A面が安田南の『赤い鳥逃げた』、B面が原田芳雄の『愛情砂漠』のシングル盤はすぐに買った。全部を収録したカセットもあり、そのときは買わなかったことを後に悔やんだが、今はCDで持っている。
まだ、桃井かおりが丸々と太っていた時代の作品である。
日本映画専門チャンネル 原田芳雄自選集