前に、渋谷のシネマヴェーラで見たときにはよくわからなかったが、これはキリストの話なのだ。脚本は椎名麟三なので、庶民的なキリスト像の話である。
天然ガスの試掘に、佐野周二、渡辺篤、佐竹明夫、中村是公ら田舎の砂浜の町にが集まってくるが、呼びかけた男は自殺し、佐野以下は途方に暮れる。そこに石油技師を名乗る伊藤雄之助が現れ、「ここから必ず石油が出る!」と予言し、連中は櫓を立てて試掘を始める。
伊藤はペテン師で、石油は出ないが、温泉が出て町は喜ぶ。
佐野周二らは、次の天然ガス試掘の場へと秋田に行くところでエンドマーク。
これは信じれば叶うということで、極めてキリスト教的な思想である。
村の女で、南風洋子、左幸子ともう一人は誰かと思っていたら、小薗容子だった。
言うまでもなく岸恵子の平沼高校の同級生で松竹にいたが、新東宝作品は珍しいと思う。
それだけ監督の五所平之助が映画界で高く評価されていた証拠だと思う。1954年、五所は新東宝と日活で3本映画を撮っていて、『大阪の宿』がキネマ旬報ベストでは10位だが、これも悪くないと思った。
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