オンリー録り

オンリー録りとは、録音の技法の一つ。
アフ・レコでもシンクロ録音でもなく、映像撮影終了後、映像に合わせ(と言っても試写は出来ないので、テープ録音したものを聞いてもらい覚えるのだそうだ)その場ですぐにやるアフレコである。

久保田幸雄さんは、岩浪映画でのドキュメンタリーから黒木や東陽一らなど、独立プロ作品が多く、シンクロしたくても機材が高くて出来ず、大きな音を出す古いカメラで撮影する。アフレコには、スケジュールやレンタル料の問題がある。
そこで、撮影が終わった後、その場で必要な人だけ、台詞を撮影時と同じようにしゃべってもらい録音する技法だそうだ。

だが、なかなかすぐにやっても同じようにしゃべるのは難しいそうだ。
田原総一郎監督のATG映画『あらかじめ失われた恋人たちよ』も、このオンリー撮りでやった。
主演の石橋連司は、アドリブの多い台詞を何度も撮影終了後再現させられたそうで、大変だったそうだ。
黒木和雄の傑作『祭りの準備』のラスト、原田芳雄が列車に向かって、万歳を叫ぶシーンも、オンリーだったので、映像撮影の終了後、原田だけ残って何度も走って録音したものなのだそうだ。
アメリカのスタッフが聞いたら驚くだろうが、日本の映画人の工夫はすごい。

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