『下町』

林芙美子原作、千葉泰樹監督、山田五十鈴、三船敏郎主演だが58分の小品。
夫がシベリヤ送りになっている山田は、一人息子と、友人村田知江子の家に間借りしている。そこは隠れ売春宿で、夫が長く療養している淡路恵子が客をとっている。山田は下町をお茶を売り歩いく貧乏生活をしている。
その中で、橋のたもとで一人で生きている男三船と知合う。
三船は、戦争から戻ってくると、妻が他の男と一緒になっていたと言う。
三船の繊細で真面目な姿がとても素晴しく、これは三船の地のような気がする。

休みの日に、二人は息子を連れて浅草に行き、急な雨降りで宿屋に泊まり、その夜二人は結ばれる。
翌朝の三船の台詞、「あのラーメンまずかったな」

山田が家に戻ると、売春容疑で夫婦らが逮捕されている。
村田はいい加減な亭主田中春男と別れ、ブローカーの多々良純と一緒になろうとする。
山田が三船のところに行くと、会社の同僚佐田豊らが三船の荷物を整理している。
三船は、仕事の帰りトラックが橋から落ちて死んだという。
すごい映画だった。
1時間もない作品だが、重いものが残った。
中年の女性たちが、口々に「人生を感じちゃったね」と言っていた。

実は、この作品は昔見たことがあり、そのときは余り感じなかったが、今回は大変感動した。
監督の千葉泰樹は、職人監督だが、真面目な作品は成瀬巳喜男を思わせる良さがある。
ラピュタ阿佐ヶ谷。

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