元宝塚のスターだった順みつきが、死んだそうだ、70歳。
花組のトップで、男役スターの一人だった。
1980年代初めのこと、正月に彼女が主役の公演を新宿コマ劇場で見たことがある。
当時、正月の東宝宝塚劇場は、長谷川一夫の東宝歌舞伎だったので、宝塚は、正月は新宿コマでやっていた。
演目は、スペインを舞台にした軽い音楽喜劇だったが、ここで彼女は、珍しく娘役を演じた。正月らしい、お遊びだったのだろう。
だが、見ていると、彼女はどう見ても、「おカマ」が女を演じているにしか見えないのである。要は、長く男役を演じてきて、身のこなしが男になっているので、急に女を演じようとしても男らしさが出てしまうのだった。
これは非常に面白い体験だった。
それは、逆に大川橋蔵がテレビで言っていたことを思い出す。言うまでもなく彼は歌舞伎の女形から東映の時代劇スターになった。当然にもチャンバラのシーンがあり、それを彼は「まるで女の子が棒切れを振り回しているようにしか見えなくて恥ずかしかった・・・」
同様に、市川雷蔵も大変に素晴らしい俳優だったが、彼にも欠点はあった。殺陣が本当は上手くないことで、よく見ると特に後ろから撮ったカットでは、腰がフラフラしておかしいのである。
いずれにしても、男女の見え方というものは、実は相対的なものであることを示すものだと思う。
彼女は、最近あまり見えないなと思っていたが、やはり体が良くなったのだろうか。冥福を祈る。