夜、芝居を見るまで時間があったので、日比谷にできた映画館で、話題作を見る。
冒頭に、「カンヌ映画祭パルムドール受賞」と出るが、これが最高の売り。
筋は書くまでもないが、題名から想像されるような、万引で生計をたてている一家ではなく、菓子等の廉価なものを万引している親父と子供たちの話である。
当たり屋という不法行為で生きている家族の映画に、大島渚の『少年』があったが、それを越える作品ではないと私は思う。
最後、逮捕されたとき警察から、子供に万引を教えてはいけないでしょうと聞かれた時の答えが最高。「俺にはそれしか教えられるものがなかった」
祖母の樹木希林の年金、リリー・フランキーの土木作業員の給与、安藤サクラのクリーニング工場での非正規労働の賃金で生きている。さらに、松岡茉優は風俗で生きている。
言ってみれば、貧乏ごっこで、金満テレビ局のお金で貧乏ごっこを見せられても、
「へえそうですか」というしかない。
前半はドラマがなく退屈だが、樹木希林が急死し、それを黙って埋めてしまうところから劇が始まる。是枝裕和監督がヒントを得たのが、年金を詐取するするため、母親の死を隠していた子供の事件だったから、そこからが光るのが当然なのであろう。
最後、男の子が万引の後逃亡して陸橋から飛び降りて足を骨折して逮捕されたことから、夜逃げしようとしていた一家が逮捕される。
そして、一家の意外な構成が明かされ、ここは少し驚いた。
松岡茉優は、樹木希林と結婚していた男が、二度目の結婚してできた男の娘(義理の孫だが)、豪州に留学しているはずで、裕福らしい家の壁に写真が飾ってある。
細野晴臣の控えめな音楽が良い。
日比谷東宝シネマズ