オウム真理教の松本智津夫の他、7人の死刑囚の死刑が執行された。
逮捕から23年も経っていると言われると、ああそうかとあらためて思うが、このオウムの裏というべきか、むしろその表には、バブル時代があった。
私の友人で、そのころから「この日本の繁栄は、ある日ガラッとひっくり返るのではないかと思う」と言っていた男がいた。反体制的な人間なので、反自民党的な希望的観測である。
だが、当時の1980年代のバブルへと向かう経済的な繁栄の中で、それに乗れず、「これにはどこかおかしいところがあるのではないか」と思った人間はいたと思う。
これは素晴らしいと、この流れに乗った、ホリエモンや村上なんとかのような男はむしろ少数派で、多くの真面目な高学歴の若者は、強い疑問を抱いたに違いない。
こうした中から、オウム真理教のような精神世界への帰依を謳うことへの関心が高まり、ニューエイジ時代になった。その繁栄ぶりは今では想像できないほどだったが、無数の本や雑誌が出されていた。外部から内部へという無知蒙昧な考えであり、1995年には春山茂雄の『脳内革命』の大ベストセラーも出た。
1995年3月の地下鉄サリン事件の時、私は、歌舞伎座で一五代目片岡仁左衛門襲名の『道明寺』を見ていて、終わった外に出ると街頭のテレビは大騒ぎだった。
だが、その時は、事件なのか事故なのか不明で、電車で横浜の自宅に戻ると「オウムが起こした事件だ」と報じていた。
アメリカのテレビは「まるでサイエンス・フィクション・ムーヴィーのよう」と防護服姿の自衛隊員を報じたのだった。