『苦い米』

横浜市南区在住の黒澤明研究会の安室さんから、「今恵比寿でやっていますよ」とのことで見に行く。

恵比寿ガーデンシネマは良い館だと思うが、恵比寿駅から遠くて参る。

『苦い米』は、イタリア北部の米の田植えを背景とした映画で、監督はジョセッペ・デ・サンテスで、リアリズムの作品であるが、結構見せ場も多い。

そこには、田植えの出稼ぎの女性が来て田植えをする。日本にも早乙女というのがあったが、やはり女性は米を植え、発芽させる力があると信じられているのだろうか。

田圃での女同士の喧嘩など、まるで昔夏のビアホールでよくやっていたドロ・レスリングである。女主人公は、シルバーナ・マンガーノで、彼女の肉体を見る映画である。映画、演劇、音楽等で、最高のエンターテイメントは演者の肉体であり、その点肉体を喪失したヒップ・ホップはどうしても好きになれないのである。日本でも、佐藤友美や夏木マリなどの同タイプの女優も昔はいたが、『火・サス』の悪女役しかないのか、最近は映像で見られないのは大変に残念である。

日本の田植えでも、終わった後で、女相撲を取るところもあり、女性の生殖能力を田圃に入れる言う信仰なのだろうか。

大がかりなクレーン撮影とコントラストの強い画面は、黒澤明映画にも共通するものがある。

ただ、ラストで、悪人の男女に騙されて米泥棒の片棒を担がされ、それを知ったマンガーノは木の塔から落ちて自殺する。

ミケランジェロ・アントニオーニの映画『さすらい』も、イタリア北部のポー河周辺を流離う話で、最後に主人公の男は、石油の製油塔から落ちて自殺する。

全体として見れば、ダイナミックな成瀬巳喜男映画とでもいうべきものかもしれない。

帰りは、丁度ハチ公バスが来たので、渋谷駅西口まで乗って帰る。

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