増村保造は、東大法学部と文学部を出た秀才で、法学部時代は三島由紀夫とも同級生だった。だが、三島が主演し、増村が監督した映画『空っ風野郎』では、増村は、三島を徹底的にしごいたそうだ。勿論、三島が役者としては、下手だから当然なのだが。
この映画は、若尾文子と共演しており、三島が臆病で、程度の低いやくざを嬉々として演じる大変おかしな作品であり、一種の珍品である。
入社した大映では、溝口健二の『楊貴妃』『赤線地帯』、さらに市川崑の『処刑の部屋』『日本橋』等の助監督に付き、1957年に『くちずけ』で監督デビューする。
『青空娘』や『暖流』などで注目された後、若尾文子を主演に『偽大学生』『妻は告白する』『嘘』『夫が見た』などの、問題作を作る。
また、市川雷蔵の『陸軍中野学校』、勝新太郎の『兵隊やくざ』等のヒツト娯楽作品も打ち出す。
大映末期には、『清作の妻』『陸軍中野学校』『赤い天使』『妻二人』などの傑作を作る。
さらに、緑魔子と『大悪党』、安田道代と『セックス・チェック』、浅丘ルリ子と『女体』、そして渥美マリと「夜の軟体動物シリーズ」の『でんきくらげ』『しびれくらげ』、そして大映最後の映画で関根恵子主演の『遊び』など、女優を主役に数々のすごい、性的な映画を作った。
それらのメッセージは、愛に殉じて死ね、と言うもので、これは彼がイタリアに留学して学んだイタリア人の生き方なのだそうだ。
イタリアでは、人間が愛に生き、愛に死んでいる。様々な束縛や建前ではなく、本当の愛と性に生きるべきだ、と言うのが増村映画のメッセージである。
皆さんご存知では、TBSの「赤いシリーズ」は、実はほとんどが増村とプロデユーサーの野添和子さん、設定、構成、脚本を考えたのだそうだ。
ともかく彼の日本の映画、テレビ界における貢献度は、大変なものだったと思う。