新国立劇場で『花咲く港』を見た後、下北沢のシネマ・アートンで『夕凪』を見る。『花咲く港』は菊田一夫が戦時中に書いた劇で、『夕凪』は私のご贔屓豊田四郎監督の昭和32年の映画である。
『花咲く港』は、菊田がアチャラカ喜劇から離れ、最初に書いた本格的喜劇で、鹿児島の離島に詐欺師が来て造船所設立話で金を騙し取ろうとする。だが、戦争勃発で会社設立と造船に成功してしまう。戦意高揚劇で、木下恵介が映画化している。主役は、渡辺徹と高橋和也で、寺田路恵と富司純子が対立する女優。
私は、昔から菊田一夫や北条秀司を高く評価し、アメリカのテネシー・ウィリアムズと同程度と見なしてきたので、このように新国立で上演されるなど評価されるのは大変うれしい。
『夕凪』は、いつもの豊田とコンビの八住利雄の脚本だが、若尾文子が淡島千景と志村喬との間の娘、池部良が志村と千石規子との間の息子なのに知らずに愛し合い、兄・妹のいわゆる「畜生道」であることがわかる悲恋という、因果話だった。
豊田四郎がなぜ、こんな因果話を作ったのか理解できない駄作だが、昭和30年代初頭の米軍接収が終了した直後の横浜の姿が見られるのは貴重。
若尾文子は豊田のお気に入りだったらしく、『波影』でも主役にしている。外国人相手のオンリーとして、中田康子、市原悦子も出る。市原も豊田のお気に入りだったらしく、『駅前旅館』で女子高校生を悪乗りさせている。
コメント
豊田四郎⇒永井荷風⇒渡辺はま子⇒阿部定⇒『浮雲』。名画座でアタマをかけめぐる男と女の連想ゲーム……
★映画を観ては身につまされてばかりいる。
雑念、妄念ばかりが脳裏をよぎる。
決して正しい映画の観方とかいえない。
それにしても男は、いやオレはアホか。
【本日の問題】
下北沢シネマアートン〈監督 豊田四郎〉『墨東綺譚』に思うオノレのバカさ加減について