夜には日本に戻る土曜日の午後、ノベロ劇場で、ロイヤル・シュエークスピア・シアターの『夏の夜の夢』を見た。
これも、成田からの機中でロンドンで上演しているのを発見したのだが、ノベロ劇場はガイドブックに載っていない。
バービカン・センターがRSCの拠点と書いてあるので、着いた翌日バービカンに地下鉄で行く。
ところが、バービカン・センターの劇場ではやっていない。
受付のお兄ちゃんに聞くと、ノベロ劇場、コベント・ガーデンの、地図のストランド劇場だという。
「なんだあ、コベント・ガーデンなのか。20年前に行ったところだ」と地下鉄を乗り継いで行く。
バービカン・センターは、日本の文化的再開発のお手本の施設で、世田谷パブリック・シアターは、明らかにここの模倣と分かり、バービカンに行ったことは有意義だった。
ノベロ劇場は、2年前にマッキントッシュの資本でストランド劇場は、内部も全面的に改装され名前も改名されたのだそうだ。
ボックス・オフィスに行くと、チケットはちゃんとある。
20年前に来たときもそうだったが、1枚や2枚のチケットは、余程売れている芝居以外なら大体あるようだ。しかも、正貨より約1ポンド安くしてくれた。
『バディ』では、正規の値段62ポンドのところ、20ポンドにしてくれた。
『バディ』は街頭の安売り店では、31ポンドだったので、安売り店より、実は劇場に直接行った方が安いのであるが、大体そのようだ。
『夏の夜の夢』だが、土曜日のマチネーだったので、子どもが多い。
しかも女の子だけではなく、男の子も多いのが驚きである。
日本では、小・中の男の子が芝居を見ることは少ないが、やはりこの世代から演劇、映画等を見せるべきだろう。多分、その辺が日本と西欧のビジネスマンとの教養の差になってしまう。
演出は、グレゴリー・ドーランで、きわめて現代的で、原作のギリシャのアゼンスの4人の若者は現在の世代に、幕間狂言を演じる職人たちも、ロンドンの下層労働者になっていた。
多分、台詞も現代のものに直されているようだった。
グレゴリー・ドーランは、2年前にRSCを率いて来日し池袋の東京芸術劇場で『夏の夜の夢』をやったが、そのときはきわめてオーソドックスな演出だった。だが、本国では前衛的な演出もやるのだろう。
ともかく役者が上手いのが悔しいが、仕方あるまい。
アフリカ系も多いが、イギリスの場合ジャマイカ等の旧植民地出身者は、容易に英国国籍が取れるので、カリビアン系も多いのかもしれない。
新演出だったが、重要なシーンでは日本でもやったが、多数の電飾を下ろしての、幻想的な処理で、大変感動的だった。
最後、隣の席のおばさんに、
「アー・ユー・ハッピー?」ときかれたので、
「スプレンデッド!」と答える。
再び、大混雑のコベント・ガーデンからパディントンに地下鉄で行き、預けてあった荷物を受け取り、エキスプレスでヒスロー空港に向かう。
きわめて楽しいロンドンだった。