大学時代からの友人・下川 博が、時代小説『ど』を書いた。本当は、奴の下に弓を書くのだが、出ないので、ひらがなで書く。意味は、平撃ちの弓矢、西洋のクロス・ボーのことだそうだ。
これは、鳥取県智頭地方で、鎌倉時代末期、農民たちが武士を雇い、悪党の襲撃から村を守ったという言い伝えを基にしている。
そう、黒澤明の『七人の侍』にヒントを与えた話である。
黒澤や橋本忍らの証言によれば、『七人の侍』は、当初は武士の一日を描くものだった。
だが、当時武士の生活は、二食だったのか三食だったのかすらも分からず、ほとんど実態は不明で脚本にできなかった。
そこで、歴代の名剣豪の逸話を集めることになり、それをまとめてシナリオができた。
だが、「すべてがクライマックスの話は、少しも面白くなくて映画にならない」と黒澤が結論付け、これも没。
その頃、誰れかが、「戦国時代に百姓が侍を雇って戦った」という話を聞きつけて来て、それで行こうとなり、歴代剣豪の話等を入れてシナリオができた。
数年前、智頭地方では、「村起こし」の一環として、イベントを企画し、映画会等が実施された。
そして、下川博が小説を書いた。
内容は、是非読んでいただきたいが、故網野善彦教授の史観に基づき、中世でも、百姓は決して貧しくも、弱いものでも、知恵・知識のない者ではなく、武士と十分対等に戦ったことを描いている。
隆慶一郎の小説を思い出していただければ、多分間違いないだろう。
是非、お読みいただきたい。
そこには、下川もそうだった、1960年代後半の反体制運動の負け戦の苦い思いと、「もし、こうやれればあるいは勝てたのではないか」との願望が籠められている。
その死者たちに合掌。
コメント
弩
弩
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表示されるでしょうか?
どうやって出すのですか
普通に入力しても出てきません。
どのように入力すれば表示できるのでしょうか。
教えて下さい。