1963年、井上梅次監督のミュージカル映画で、松竹大船作品である。
ショー・ダンサーの水谷良重、倍賞千恵子、鰐淵晴子の3姉妹とその父で元手品師の有島一郎一家の話。
井上は、3姉妹が好きで、この前にも『お転婆娘三人娘』でも、轟夕起子の娘で、ペギー・葉山、芦川いづみ、浅丘ルリ子の3姉妹の話を作っているそうだ。
ここでは、姉妹と父親との対立もテーマになっている。
一度は喧嘩別れした有島と水谷が、共にドサ廻りに零落した地方のキャバレーで再会する、お涙頂戴シーンもある。
ともかく、この1960年代初頭は、『ウエスト・サイド物語』の大ヒットを初め、テレビの音楽バラエティー、あるいは労音等の活動で、「ミュージカル熱」が異常に高まったときである。
その中で、東宝の須川栄三監督の『君にも出世ができる』とならび最高作の一つだろう。
井上の音楽映画では、少女漫画のようなロマンチツクな部分、演劇青年たちが自分たちでミュージカルを妄想する青臭いところ、浪花節的お涙頂戴が、ない混ぜになっている。
ダサい言えばそれまでだが、これこそ娯楽映画だとも言える。
音楽は広瀬健次郎で、須川の黛敏郎のような高い音楽性はないが、上出来だろう。
水谷良重が一番思い入れて演じているが、彼女が一番ミュージカルに舞台、テレビ、映画と長年の経験があったからだろう。
井上は、この後ほぼ同趣向で『香港夜想曲』として、香港でリメイクしている。
ここでは日本映画への出演のインチキ話があり、それがピンク映画のことだったという時代ネタもあった。
この頃までは、井上梅次も、テンポが快調で、ましだったようだ。
神保町シアター