昭和20年秋、つまり敗戦直後に撮影され、翌昭和21年の正月に公開された東宝作品。
監督は、喜劇の王様・斎藤寅次郎。
軍需工場から戻って来た、古川ロッパ、エンタツ・アチャコ、石田一松、柳家権太郎の5人が焼け跡の東京で生きていく姿を描く。
エンタツ・アチャコの妻が、田中筆子・戸田春子の、その後独立プロ映画のおばさん役の女優も出ている。
5人が戻って来て、家に来ると「忌中」で、彼らの葬式をやっているギャグから快調。
話は、配給、闇、顔である。
まさに、時代にぴったりのテーマであり、笑いである。
ロッパが息子とドラム缶風呂に入り、
「お殿様でも、家来でも風呂に入るときゃ皆裸」
という歌は、多くの日本人に時代そのものをかんじさせたそうだ。
なかなか良い歌で、ロッパが様々な歌を綴るのは、実に楽しい。
描かれている社会は、経済学的に言えば「絶対的窮乏」だが、全体はひどく明るい。
やはり、戦争が終わり、平和になったうれしさである。
最後、闇の横流しをやっていた軍需工場の社長たちの悪が摘発され、5人は自分たちで食糧を作ろうと農園に行進していくところでエンド・マーク。
実際に見た方は、戦争が終わり平和がきてよかった、とつくづく思ったにたに違いない。
東京が一面焼け野原が凄い。
ロケは下町だろうか、諸所に竪穴式の防空壕の穴が見える。
この焼け跡のシーンは、ブラジルで上映したとき、
「本当か、嘘か」で大問題、大論争になったそうだ。
日本があのように敗北し、焼け野原になるのはずはないとして。
「神州不滅」を信じていた人は、到底受け入れられなかったでしょうね。
横浜市中央図書館AVコーナー