1959年に大映で製作された清水宏監督作品、主演は淡島千景と根上淳、そして彼らの二人の子供、子役だがとても上手い。
水上バスの運転手の根上と、病院の食堂で働く淡島は、共に配偶者を失い、それぞれ一人の子を抱えて生活している。
病院に食糧品を入れている豆腐屋見明凡太郎の紹介で、二人は浅草で見合をする。
食事した後、二人は寄席に行くと、そこでは林家三平が演じているが、姿は写さず、声のみの出演。
結婚して、淡島は根上の家に小さな娘と一緒に来る。
その子は、すぐに根上になつくが、根上の息子、小学生の道夫は、淡島になれることができない。
学校では、級友が「継母にいじめられるぞ」と冷やかす。
この女の子は、ませていて、おしゃまで、とても芝居が上手い。
道夫には、1年前に死んだ母親を忘れることができず、母から買ってもらった鳩を大事に育てている。
当時、伝書鳩などを育てることが流行していて、大島渚の監督デビュー作の『愛と希望の街』でも、主人公は鳩を飼っている。
女の子が、鳩を小屋から逃がしてしまったり、道夫が探しに行って警察に保護されたりするなどあるが、最後道夫も
「お母さんは、どこにも行かないで家にいて頂戴」と言って、この義理の親子も和解してエンド・マーク。
清水宏は、子供を使うのが上手い監督で、ここでも道夫の心理を繊細に描いている。
多分、ほとんど振り付け芝居、マキノ雅弘などがした、「そこで1歩歩いて、右に体重を掛け、そこで上を見上げる」と言った具体的な行動で演技させるものだったと思う。
これは、演技方法論としては、江戸時代の歌舞伎の「ちんこ芝居」などの、子供に演技させてそれらしく見せる芝居の演出法の延長線上にあるものである。
全体の感じとしては、大映的と言うよりも、松竹蒲田的である。
実際の清水宏は、助監督を務めたことのある西河克己によれば、異常にわがままで、理不尽にえばりくさる監督だったらしいが、表現はとても繊細であるとは、実に皮肉。
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