前から気になっていた映画で、沢島忠監督なので、期待して行ったが、全くのはずれの作品だった。
こういうこともある。
脚本が池田一朗だが、極めていい加減。
主人公の北大路欣也は、大企業のサラリーマンだが、組織で仕事することができず、突然退社してシンガポールに行き、そこでカンカン虫、つまり船の貝殻取りの肉体労働者になる。
就業ビザがなくてそんなことができるのかと思うが一切説明なし。
大体、北大路欣也が、シンガポール、マレー、ボルネオと行き、ペラペラとマレー・インドネシア語を話すが、なぜ話せるのかの説明もない。
そして、なぜか会社の女子社員の栗原小巻が、北大路を追って来る。
ボルネオで中谷一郎とエビを取る会社を始め、いろいろあるが結局大成功し、栗原とも結ばれる。
全体の運びがひどくいい加減で、まるで中村錦之助の「一心太助」を見ているようなのだ。
結局、沢島忠には、現実の作品は無理ということなのだろう。
彼の東映時代の娯楽時代劇は素晴らしいが、この前に作ったサスペンスの『幻の殺意』もひどかった。
北大路の父親が伊志井寛で、彼だけが真面目に演じているのが可哀想に見える。
ただ一つ発見したのは、栗原小巻が演技していないときは、多分可愛いだろうということで、この人は普段の演技していない時の方が、チャーミングなのだろうと思う。
そうした可愛さを普通に演技で表現できないのは、やはり俳優座の新劇的演技の弊害だろう。
むしろ、彼女は今のテレビのトーク・ショーに出たら、嫌いな言葉だが「天然ボケ」で人気になるかもしれない。
あの高畑淳子のように。
阿佐ヶ谷ラピュタ