小津安二郎のサイレント時代の映画に『東京の合唱』がある。
岡田時彦らの旧制中学の同級生の連中が、恩師斉藤達雄のカレー屋で歌うもので、無声だから声は聞こえないが、明らかにコーラスではなく、斉唱である。
ユニゾンをコーラスと言うのはひどい誤解だが、昭和初期の日本人の音楽知識ではそんなものだろう。
ところで、総選挙で話題のAKB48だが、これもコーラスではなく、ユニゾンに聞こえる。
また、将軍様のお国のパレードのお歌も多分、斉唱だと思う。
私は、黛敏郎ではないので、コーラスの方がユニゾンより高級だとは思わない。
要は、アジアでは、コーラスよりもユニゾンを好む習性があるに過ぎない。
欧州でも、アジア的感性のあるブルガリアのブリガリアン・ボイスもユニゾンである。
小津安二郎も、そう考えれると、極めてアジア的な感性の人であったと言える。