『黒い傷跡のブルース』

1961年、小林旭主演のアクション映画、監督は野村孝、旭の相手役は当時16歳の吉永小百合、吉永の父親で、旭を罠に陥れた犯人は大坂志郎。

ムードアクション映画の魁斗のところも見えるが、まだ小林旭が美青年で、過去のある男には見えないので、やや中途半端なできになっている。

実は、この作品は、20年くらい前にTVKで見たことがあるが、勿論CMが入るものだったので、全体の感じはよくつかめなかった。

野村孝は、抒情的で的確な描写が良い監督で、時代劇も小林旭主演で山本周五郎原作の『無法無頼の徒・さぶ』がある。

浦山桐郎の名作『キューポラのある町』の続編『未成年 続・キューポラのある町』という大変真面目な作品もある。

野村と言うと、宍戸錠主演の『拳銃は俺のパスポート』となるが、その前の高橋英樹、芦川いづみ主演の『殺るかやられるか』も秀作で、この頃は何を撮っても最高だったのだ。

 話は、横浜のヤクザ堤組の幹部の旭が、密輸拳銃の取引で、親分の松本染升の命を受けて神戸に行く。

と現場で襲われ、殺人容疑で5年間刑務所に入る。

5年後に出所して戻ると堤組は潰れ、新興ヤクザの神山繁の組が縄張りを乗っ取っている。

旭は自分たちを罠に陥れた犯人の大坂志郎が、横浜の元町でスーパーのオーナーになっていることを突止める。

スーパーの撮影場所は、元町のユニオンであるが、内部のレイアウトは現在と随分違っていて興味深い。

吉永小百合は、大坂志郎の前歴を知らずにお嬢様として育ち、バレーをやっていて発表会では『白鳥の湖』でプリマを演じる。

結構きちんと踊っているが、さすがに上半身だけで、足元は撮さない。

吉永は次第に旭に引かれていくという敵同士の恋になる矛盾をきちんと演じているのは流石で、とても16歳には見えない。

16歳と言えば、戦前の日活の名作、山中貞雄監督の『河内山宗春』での原節子だが、やはり美人は最初から美人である。

美術が木村威夫で、山下公園の中に旭や子分の郷英治らが通う稲葉義男がオーナーの喫茶店があるなど、平気で嘘をついている。

私が知る限り、公園に民間の飲食店があるのは、日比谷公園の松本楼だけで、公的施設に設置できるのは、公共団体の外郭団体や福祉団体などだけである。

最後は、勿論旭の活躍で、神山繁以下の悪人は倒され、大坂志郎は彼らの銃弾で死んでしまう。

小林旭は、スタントを一切使わず、自分で危険なアクションもやっている。

この『黒い傷跡のブルース』には、新東宝が潰れた後の大宝での小野田嘉幹監督、島崎雪子、牧真介主演のもある。

2年前にシネマ・トライアングルで見たが、日大芸術学部教授猪俣勝人先生のシナリオにしては、生徒に自慢して見せられるレベルのものではなかった。

この野村孝版の方がはるかに上。

チャンネルNECO

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