渋谷の東横線の変更に続き、下北沢の小田急線の地下化が行われ、下北沢駅のそばにあった闇市的商店街も取り壊されるそうだ。
基本的に私は、ああいう商店街は嫌いではないが、それが再開発されるのは、仕方のないことだと思っている。
それが社会の進歩というものだからである。
都会の人間はあのようなゴミゴミとした街並みが好きなものだが、それは多くの場合趣味の問題に過ぎない。
昔、東京と横浜で港湾関係の国際会議が行われ、その事務局として参加者を東京から大挙して横浜に連れて来たことがあった。
港湾を船で回った後、バス・ツアーが山下公園前を通り、当時そこにあった旧公共臨港線下の屋台店を見たとき、欧米人の彼らは
「エキゾティック!」と大騒ぎで叫び、皆が写真を撮ったのである。
欧米人は、香港等に代表されるアジア的な風景が大好きである。
さて、問題の下北沢の闇市的商店街が見られる映画がある。
豊田四郎監督、水木洋子脚本、京マチ子主演の1964年の傑作『甘い汗』である。
豊田四郎のブラック・ユーモアがよく出た映画で、舞台は東京下町だが、京マチ子が、池内淳子とラーメンを食べるのが下北沢の闇市商店街である。
そこでも、若宮忠三郎らの店主は、「ここもすぐに取り壊されますよ」と再開発のことを言っている。
『甘い汗』は、あまり放映されない映画だが、隠れた名作である。