『非行少年・若者の砦』

1970年4月、日活が6月から大映と一緒にダイニチ映配を作る直前に作られた藤田敏八監督作品。

前の『非行少年・陽の出の叫び』に続く、非行少年ものだが、内容はまったく違う。

原作は立原正秋の小説で、元非行少年で、苦労して大学も出たが、今は自動車修理工場で働いている地井武男のところに、クラブのママの南田洋子が、不良息子石橋正治の家庭教師で監視役を依頼してくる。

そこから様々な事件が起きるが、例によって藤田敏八作品なので、とりとめがなく、紆余曲折する。

石橋正治の義姉松原智恵子の邸宅で、江原真二郎、梶芽衣子、伊丹十三らによる豪華なパーティーなども挿入される。

石橋は、大富豪が愛人だった南田洋子に産ませた子で、本妻との間には、江原や松原などの子供がいたのである。

この辺の、江原や松原など、かつてのスターが出るあたりが、日活末期で、ダイニチとの過渡期であることがよくわかる。

最後、石橋は教師の加藤和夫を暴行して警察に逮捕される。

留置所で、地井武男は、石橋に断言する。

「自分の牙は自分で研げ!」

地井武男は、少年時代に、母親が韓国人であることを体育教師の木島一郎から言われたので、彼の手のひらにナイフを突き刺したのであった。

この高校で非行をする少年石橋は、1年後に日活最後の映画『八月の濡れた砂』の主人公の村野武範となって戻ってくることになる。

チャンネルNECO

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