1983年に作られた木下惠介監督作品で、長崎の原爆で亡くなられた永井隆博士を描いたもの。
1950年代に同じ題材で、大庭秀雄監督で『長崎の鐘』もあり、これも秀作だった。
長崎大学の放射線科の医師永井(加藤剛)は、妻の十朱幸代と2人の子供と平和な生活を送っていた。
彼は、長年の放射線の治療ですでに白血病に罹っていたが、クリスチャンで常に献身的に働いていた。
そして、8月9日、原爆が投下され、妻はほぼ即死し、加藤も被災した市内を治療行為していたため、重い原爆病になる。
幼い子供を残し、ついには病院に働くことができなくなり、自宅で療養しつつ、病床で著作に励む。
母親は、今年亡くなった淡島千景。
原爆で頬にケロイドが残り、しかし投下の時、子どもを助けず自分だけ逃げたことを悔いいて尼僧になる教師大竹しのぶの演技はさすが。
最後、昭和26年に博士は死んでしまうが、そこで長崎の惨状が再現される。
当時はまだあった松竹大船に作られたオープン・セットでの惨状はやはりすごい。
それでも、カメラの岡崎宏三の本によれば、死体の内蔵などを並べると、木下恵介は拒否したそうで、これでもきれいごとになっっているようだ。
国防軍や自主憲法制定や集団的自衛権を唱える連中は、本当にその結末がどうなるのか、よく分かっているのだろうか。
1970年代以降は、5年に1本しか作品を作れなかった黒澤明に比べ、木下恵介はそれなりに恵まれた晩年を送ったというべきだろうか。
衛星劇場