山田洋次監督の『下町の太陽』を見る。
前にテレビで見たときには気づかなかったが、この映画の舞台になっている場所は、今の東京スカイツリーが建っているところである。
曳舟駅や三ノ輪等が出てくる。主人公の倍賞千恵子が父の藤原釜足らと住んでいるスラムのような住宅は、特定されないが千住あたりだろうか。
倍賞が働いているのは石鹸工場で、ここには資生堂やライオンの工場があったが、資生堂は再開発されてヨーカ堂や区民文化センターになっている。
一方、勝呂誉が働いているのは製鉄所(といっても溶鉱炉を持っているのではなく電炉メーカーのようだが)である。
いずれにしても肉体労働が賛美され、待田京介や早川保に見られる、下町を抜け出して丸の内でのホワイトカラーになることは、卑怯な行為とされている。
戦前の小津安二郎の時代から、千住などは、松竹の庶民映画のホームグラウンドで、この映画も城戸四郎の好みによく合っていたのだろう。
昨年、『東京家族』が公開された時、「山田洋次監督生活50年」が謳われ、この作品が起点となっているようだ。
だが、よく知られているように山田は、その2年前に『二階の他人』を撮っている。多分、それは助監督契約だったので、『下町の太陽』を起点としたのだろう。
山田洋次が監督生活50年なら、今年は黒澤明が1943年に『姿三四郎』で監督デビューして70年になる。
山田と黒澤は、たった20年間しか監督デビューの時期が違わないことには驚く。
来月6月6日には、黒澤明の特に戦後の作品の底にあった「贖罪意識」について、トークイベントを行いますので、時間のある方はよろしく。