久しぶりにフィルムセンターに行き、清水宏作品を見る。
『金環食』は、電源開発汚職を描いた山本薩夫監督作品もあったが、あれは石川達三原作で、これは久米正雄原作である。
サウンド版という、サイレントからトーキーへと移る時期の過渡的な作品であり、音楽はトーキーだが、台詞は字幕で出る。
多分、劇場の楽士たちをまずクビにし、活弁のみは残し、彼らに説明させならが上映されたと思う。
そうやって、松竹はトーキーへと変化していったのであろう。
サイレント映画は、どうしても眠ってしまい、筋がよくわからなくなったが、要は藤井貢、川崎弘子、桑野通子らのメロドラマである。
どこまでが原作で、どのへんからが脚色なのか分からいが、ここで描かれているのは、都市文化と遅れた農村の対立。
アメリカ的なモダニズム文化への憧れと都市の経済社会の不安定さ、混乱といったものだろう。
最後に藤井貢と桑野通子が別れ話を交わす海辺のホテルの芝生は、伊豆の川奈ホテルだろうか。
この時期以降の映画によく出てくる。
夜は、同じく藤井貢主演の『大学の若旦那』があったが、1日に清水宏2本はきついのでやめる。
フィルムセンター