『徳川いれずみ師・責め地獄』『江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間』

1960年代末に、石井輝男が東映で監督した問題作、どちらも主演は吉田輝男である。

『徳川いれずみ師・責め地獄』は、江戸時代の刺青師吉田輝男が、悪辣な与力田中春男やその愛人由美あずさ、さらに長崎の外人たちによって被る悲劇。
例によって、同じ刺青師・小池朝雄との刺青争いが最初と最後に展開される。
徳川将軍の前での刺青比べでは、当初吉田の彫った刺青は何も見えず、「あれっ」と思う。
ところが、女に酒を飲ますと小池が彫った刺青の下から吉田が彫った刺青が現れてくる。
最後は、外人の娘ハニー・レイヌーの皮膚に入れた刺青は、暗くなると光りだす蛍光塗料のようなものだが、これはあまりびっくりせず。
ハニー・レイヌーは、当時人気のモデルだったが、これで見ると非常に小柄である。
ともかく刺青なので、裸の女がふんだんに出てくる。
『恐怖奇形人間』は、異常な欲望に取り付かれた田舎の富豪土方巽により起こる悲劇で、最後大木実の明智小五郎が、謎解きをするが、よくわからない筋書き。
土方巽は、言うまでもなく舞踏の創始者の一人で、イデオローグだが、この時期の石井映画には重要な役として出ている。
大変異様な雰囲気を良く出していると思う。

エロ、グロ、ナンセンスと言われれ、良識派からは批難される石井輝男作品だが、ラストはいつも勧善懲悪である。
その意味では、きわめて常識的な世界なのだ。
新文芸座

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