1956年、東宝で作られた宝田明、青山京子主演の青春映画、と言うよりも、明らかに2年前に製作されて話題になった、三島由紀夫原作の『潮騒』の二匹目のドジョウを狙ったような作品。
やはり、都会ではなく、辺境の地、長崎の五島列島の小島の話で、珍しいのはそこがキリシタンの伝統があり、村の半分がキリスト教で、残りの半分が仏教徒の農民の構成。
ごく平和な村なので、喩一の警官の尾上九朗右衛門は、拳銃を村の境界の地蔵の裏に隠してキリスト村に入るくらい。
そこで、いきなり村人たちのケンカが始まる。
キリスト側の貧農の青年の宝田明が、仏教側で網本の娘青山京子を誘惑して逢引していたというのだ。
キリスト側のリーダーは、神父の上原謙で尼僧は一の宮敦子、仏教側の頭目は、頑固親父の東野英治郎で、その妻は沢村貞子というしっかりした脇役。
その他、東京から戻って来たダンサーが谷洋子で、島に来る外人の神父は、誰だと思うと当時は谷が結婚していたフランス人俳優だとのこと。
村の大人たちは、若い二人の結婚を容易には了解できないが、両性の同意があればそれで当然とする若者たちは、宝田と青山が結ばれることを望んでいる。
そして、宝田と青山は一時は島を出ることを考えるが、みなに祝われてこその結婚だとして島に戻り、二人が全員に祝福されて結ばれることを示唆して終わる。
宝田、青山のほか、二人の敵役は仲代達矢で、同じ俳優座の河内桃子も村娘で出ているが、やはりきれいである。
これこそが、戦後民主主義の結婚観であり、この延長線上に、現天皇陛下と正田美智子さんのご成婚もあったのである。
そうした民主的感覚は、当時は全国民のものであり、いまさら安倍晋三政権が壊そうとしているのは、非常に愚かなことだと私は思う。
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