40年間、横浜市にいて、選挙については、国政、地方、さらに投票所、開票所、そして立候補の受付までやったが、これほど面白いものはない。
私の考えでは、市役所の仕事で、一番興味深いのは、選挙と生活保護だと思っているが、どちらも日本国民の実像に直接触れられるからである。
ある区で、投票所の管理者をやっている時、昨年社民党党首を引退した福島瑞穂を自民党の候補と信じている叔父さんがいて、びっくりしたことがある。
また、別の区の市営住宅の投票所では、必ず代理投票に来るお婆さんがいた。
要は漢字を書くのに自信がないらしく、候補者の名を書いたカードを持って来て、これを書いてくれと言う。
代理投票で、職員に代筆させ、本人に見せて投票してもらうが、この方は必ず公明党だった。
さて、今回の衆議院選挙の新聞等の報道の最大の問題は、当初から「与党圧勝」と盛んに書いたことである。
これでは、「投票に行っても意味がないから、棄権しろ」と叫んでいるようなもので、そのために投票率は52%と戦後最低になった。
公明党とそれに最近の自民党も、低投票率の方が有利なので、これはマスコミを巻き込んだ自民、公明の勝利だった。
だが、自民は291と獲得議席数を減らしているので、「大勝」とか「圧勝」と言うのは本当はおかしいことである。
自民党は、比例での獲得票数でもそうは増えていないのだから。
民主党は、2009年の時は、2,800万票を獲得したそうだが、今回は900万票で、この差が2009年の69%と今回の52%の投票率の差になる。
細かい移動は別として、2009年に民主に入れた人の約2000万人が、今回も棄権していることになる。
それは勿論、日本の政治があるいは大きく変わるかも知れないと期待して民主党に投票した有権者の期待を、民主党の実績が大きく裏切ったからである。
この打撃から回復するのには10年はかかるだろうと2012年に私は思ったが、やはりそうだろう。
しかし、GDPを見ても景気は明らかに落ちており、アベノミックスは、来年には失速すると思うので、その時はまた大きな波乱が来ると思う。
だが、そうやって世代交代などして、交互に新しい党を作って行き、政権獲得を互いに目指すのが二大政党制であり、小選挙区制の目的である。
今回の選挙で、横ばいの維新の党はともかく、次世代、さらにみんなは、すべてダメなことが明らかになった。
第三極など、小選挙区制では所詮は無理なのである。
今回で、一つだけ良かったことは、次世代ならぬ前世代の石原慎太郎、さらに前横浜市長の中田宏が落選したことで、選挙民もそう甘くはない。
石原については、1956年のデビュー以来、日本の社会を騒がせてきた男の終焉で、これで戦後の太陽族は本当に終りになるは、誠にご同慶にたえない。