昨日は、伊勢佐木町の横浜シネマリンで、「松竹120年」について話したが、その前後に小津安二郎監督の『彼岸花』と『晩春』を見た。
両方とも、映画館で見るのは久しぶりだったが、どちらもDCP上映で、鮮明な画面と音で驚いた。
小津の最初のカラー映画『彼岸花』では、小津好みの淡いアグファ・カラーが再現されていて、木造家屋の木の色の細かい差異がきちんと表現されていた。
また、『彼岸花』は、前作で非常に不評だった『東京暮色』を裏返したような作品だが、ここでは『東京暮色』で自殺した有馬稲子が生きたら、どうなったのかという筋になっている。
ここで有馬の役を演じるのは、やはり笠智衆の娘の久我美子で、音楽家の渡辺文雄と一緒になり、笠智衆の許しを得られず、家出している。
有馬は、笠智衆の友人の佐分利信の娘で、突然に会社に来た佐田啓二との結婚話を聞き入れない、頑固親父の長女を演じている。次女は桑野みゆきで、母親は田中絹代である。
いろいろあるが、京都の料亭の娘の山本富士子の活躍などがあり、佐分利は有馬と佐田の結婚を許し、最後は彼らが住んでいる広島を訪れることになる。
ここでは、小津は若い世代への和解と許容を表していることになる。
今から見れば、この1958年は日本映画史上で、最高の観客動員数を記録した年であり、作品全体を包む「幸福感」も、そこから来ていると思う。
『晩春』は、モノクロ映画だが、音声が明瞭になっていて、台詞のやり取りがテンポがあり、作品の流れが非常に早く感じられた。
また、原節子の妖艶さは異常なほどで、蓮見重彦先生の「近親相姦」説も、多少は本当のように思えた。
来週には溝口健二の『残菊物語』もDCP上映されるので、ぜひ見に行くことにする。
横浜シネマリン