1961年の芸術祭参加作品の『世界大戦争』を見た。見るのは二度目で、一番印象に残るのは、中北千枝子が横浜から東京に戻る道で倒れた奥を団扇太鼓の列が通っているシーンである。
言うまでもなく、中北は、製作の田中友幸の妻であり、さすがにいい場面に出ているなと思う。両夫妻の息子に田中大三さんがいて、大学の映画研究会で2年上におられた。
さて、この団扇太鼓のシーンで気づいたのは、やはりこうした土俗的な音響や踊りが、特撮映画には必要だということだ。
アメリカの『キングコング』では完全に南国の原住民の踊りや習俗が出てくるし、『ゴジラ』でも大戸島の住民の踊りのシーンがある。
現在で見てみると、やや差別的であり蔑視も感じるが、こうした土俗的音楽や舞踏は、必要なのではないかと思うのだ。
その証拠に、『ゴジラ』から伊福部昭先生の、ダダダを除いたら、『ゴジラ』の魅力は半減してしまうに違いない。
要は、トーキー映画の魅力の半分は音なのだから、ある意味で当然なのだ。
1970年の『決戦! 南海の大怪獣』以後、こうした土俗的な「どんたた踊り」は姿を消してしまったそうだが、私は芸能山城組にでも依頼して、インドネシアのケチャを上手くアレンジして入れてほしいと思っている者のひとりである。
今回の『シン・ゴジラ』での唯一の不満は、「どんたた踊り」が見られないことである。