豊田四郎特集で『若き姿』を見た。昭和18年12月、朝鮮映画社制作、松竹・東宝協力となっている。不完全版で、タイトルはない。
朝鮮の中学校の話。派遣少佐が丸山定夫、他に佐分利信、永田靖、東山千栄子、河野秋武など。主人公の教師とその妻になる女優は朝鮮の役者。
ひどく暗い画面が続いたり、台詞が途切れ途切れの部分も多く、細かな意味は良く分からないが、
朝鮮の中学生たちが「帝国臣民」を自覚し、自分勝手な行動ではなく、連帯責任と決死の覚悟を自覚するまでの映画である。
中心になるのが、軍隊への体験入隊と山岳での登坂訓練である。そこでは、映画『八甲田山』にも出てきた『雪の進軍』が唄われる。
生徒たちは遭難するが、最後は飛行機と軍隊の活躍で救助される。
スキーのシーンがあるが、これなどは戦後の黒沢明脚本、谷口千吉監督、三船敏郎主演の『銀嶺の果て』のスキー・シーンを思わせる。
ともかく、当時の重要な国策である朝鮮人出征を促進する映画であり、本来軟派の豊田四郎もこういう映画を撮っていたのか、と考えさせられた。