『青空娘』

昭和33年、増村保造監督作品。主演若尾文子。約50年前の作品だが、全く古くなっていない。以前、戦後の日本映画の監督で最高は今村昌平と書いた。それに変わりはないが、増村も同じだろう。

田舎で育った少女若尾が、父親(信斤三)のいる東京に来る。
だが、若尾は、信と正妻沢村貞子との子ではなく、愛人との間の子なので、女中同様に扱われるが、若尾は明るく東京を生きていく。

本当の母三宅邦子との再会のシーンはやはり感動的。
これは、大映得意の「母もの映画」の形態を取りながら、現在を描いていることに気づいた。
さすが増村。ここでも、すべての人物に愛に向かって生きよ、と言っている。

木造駅舎の東中野駅や外食券食堂が出てくる、まだ終戦直後的風景。
一方で、電気掃除機、コーラやサンドイッチとピンポン大会、ジャズ(若尾の兄品川隆二が演奏するバンドで歌うのはジャズシンガーで、東郷清児の娘の東郷たまみ)など、新しい大衆文化も出てくる。
東郷は、水谷八重子の娘良重、伊東深水の娘朝丘雪路と共に「七光りトリオ」で、ジャズ・シンガーとして結構活躍した。

神武景気から高度成長に至る日本の経済社会の興隆を示唆させる映画である。

増村は、大映最後の映画、関根恵子の『遊び』も撮り、その後はテレビの「赤いシリーズ」を総指揮した。
全体構成の他、パイロット版の作成、重要な回で監督するなど、働きすぎで、比較的早く死んでしまったのは、大変惜しいことである。
もっとも、増村最後の映画『この子の七つのお祝いに』は、古臭い因果もので、大変ひどい出来で、見たときは唖然とした。

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