「桑野みゆき特集」、彼女の最後の出演作品。富裕な男(田村高広)と婚約していた上流階級の娘桑野が、女たらしのピアニスト細川俊之と一緒になり、身を持ち崩し最後は娼婦になる話。最後の作品としては最低。
原作谷崎潤一郎、脚本新藤兼人、監督吉村公三郎。
昔、見て「詰まらなかった」と思い込んでいた。
だが、今回見て、一度も見ていないことが分かったが、やはりひどかった。
多分、この時期の吉村公三郎作品として、川端康成原作で若い女の裸だけを売り物にした駄作『眠れる美女』があり、それと混同していたようだ。
恐らく、予告編を見て、その時に「ひどい」と思い、見なかったのだろう。
表現のセンスが信じられないくらい古い。
桑野と田村がセックスするシーンでは、ミミズのカットが挿入される。
ミミズ千匹か。
同様に水中に墨汁が広がる映像、薔薇の花が開くカットで、性的恍惚感を表現している。ほとんど、お笑い的比喩。
吉村は、昭和20年代は、現代の風俗を描く鬼才監督として多くの名作を残したが、この頃は完全に時代とズレていたようだ。
細川がピアノを弾くが、本当に引いているように見える。彼は、ピアノができたのか。
音楽が、近代映画協会映画ではいつもの林光ではなく、大映作品の多い池野成。
田村と桑野が隅田川を歩むシーンに流れるのが、『陸軍中野学校・開戦前夜』と同じ旋律なのがおかしい。
コメント
水中に墨汁・・
>水中に墨汁が広がる映像、薔薇の花が開くカットで、性的恍惚感を表現している。ほとんど、お笑い的比喩。
よくある比喩で「波がざぶ~ん」という
のもありますね。(笑)
吉村監督の映画は結構好きだったのですが
ちょっとがっかりですね