今、神奈川新聞に俳優加山雄三の自伝が載っている。戦後日本の芸能史の一部でもあり、大変興味深いが、先日ワイヤーレコーダーのことが載っていた。
ワイヤーレコーダーとは、テープレコーダーと同じ原理だが、テープの代わりにワイヤー、つまり細い銅線を使うもので、テープレコーダーに先駆けて戦前から実用化されていた。
テープレコーダーを開発したのは、実はナチスドイツである。
ある日、連合国がヒトラーの演説を傍受していると、同時に別の場所で演説しているのがあり、それが音質がきわめて良いので、新しいタイプの録音機に気づいたと言う。
当時は、ワイヤーレコーダーや、SPレコードの円盤に直接録音するレコーディング・カッターしかなく、それらは余り音質が良くなかったからだ。
銅線や円盤では、素材の特性上良い音質にはならないらしい。特に高音が良く出ないようだ。
ジャズの歴史的名盤『ミントンハウスのチャーリー・クリスチャン』は、素人が自分の携帯用のレコーデイング・カッターで録音したもののレコード化である。
加山雄三の家、すなわち上原謙家では、戦後すでにワイヤーレコーダーがあり、上原はそれで台詞の練習をしたが、加山は自分の演奏を録音したと言う。
ワイヤーレコーダーにも種類はあり、携帯用のものが多かったようだが、今回の写真で見ると卓上式の大きなものだった。
さすが、上原謙、当時日本でも最上の報酬を得ていた大スター。
随分と高価な輸入品だったに違いない。
ソニーがテープレコーダーを開発したとき、一応参考にしたのがワイヤーレコーダーなのだそうだ。
今の若い人は、オープンリールの大きな丸い円盤が回るテープレコーダーも見たことがないのだろう。
技術開発の速度はきわめて早い。