『ニュースフロント』

日曜日、フィルム・センターに夕方もいて、オーストラリア映画『ニュースフロント』を見る。

1940年代から1950年代、ニュース映画は全盛時代だった。
オーストラリアに2社あったニュース映画会社のカメラマンを描く作品である。

日本でも、フランキー堺主演の、日本映画新社の実在ニュース・カメラマンを主人公にした『ぶっつけ本番』という作品もあった。

日本では、昭和の満州事変あたりから、ニュース映画は大変盛んになり、大都市にはニュース映画専門劇場が出来る。新橋ニュース、内外ニュース、横浜の野毛にも横浜ニュース劇場があった。
テレビのない時代、戦争映像は、血わき肉躍る、最も人気のあるアクション映像の一つだった。

この映画でも、第二次世界大戦から選挙、移民受入、共産党非合法化国民投票、さらにカー・レースなど、様々なニュース報道にかける男たちが描かれていて、彼らは大変な人気者である。
今の女子アナ人気みたいなものだろう。

2社とは、シネトーンとニュースコムで、シネトーンとは、明らかにムービートーン・ニュースのもじりだろう。
ムービートーン・ニュースとは、トーキーを始めた20世紀フォックス社のニュースで、よく洋画館でやっていた。
他には、ライオンの咆哮から始るメトロ・ニュース、フランスのパテ・ニュースなどがあった。
日本映画の各社もニュース映画会社と提携し、必ずニュースを併映していた。
東宝は日本ニュース、東映は朝日テレビニュース、大映は新理研ニュース、松竹が読売ニュース、日活は毎日ニュースだったと思う。
ニュース映画は言うまでもなく、テレビの発展で衰退する。
日本の映画館でも、一部の三番館などで中日ニュースやサンケイスポーツ・ニュースをやっていたのが最後だろうが、1970年代の初頭には消滅した。

この映画でも、1956年、アメリカに行き大成功して戻ってきた弟と一緒になる妻と別れ、主人公が辞職届けを役員室に持って行ったとき、経営難からの2社の合併を知らされる。
そして、その年にメルボルン市で開催されるオリンピック映画の撮影監督に任命される。

ハンガリー動乱の遺恨試合の、ソ連とハンガリーの水球試合の乱闘映像を、弟からアメリカの映画社に高額で売ってくれと言われたとき、主人公はきっぱりとはねつける。
主人公は、労働党支持の左翼的知識人なのである。
元の妻と弟は言う。
「時代遅れなんだ」
オーストラリアの知識人の複雑な心情が分かる作品である。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする