1944年に公開された五所平之助監督の作品、原作は幸田露伴の小説。
日曜日の午後は、台風の雨で外に出られれず、新人監督映画祭の応募映画を見ていた。
知恵や工夫のない作品が多くて少々うんざりしたので、普通の映画を見たいと思って見る。
東京谷中の感応寺に五重塔を建てることになり、寺のお上人・大矢市次郎から、重兵衛・花柳章太郎が指名されて、無事工事を完成させる苦心話だが、あまりに普通で劇的なところがなく感動しない。
飯島正先生の本『戦中映画史』でも、あまり評価されていないが、飯島先生はドラマチックな作品がお好きなので、お気に召さなかったのだろう。
重兵衛の花柳は、当初は髭面で汚いが、棟梁に指名されて現場に現れると、さっぱりとした二名目で、この辺はさすがにわかりすくて良い。
この頃、五所平之助は、体も完全ではなかったようで、あまり心身を打ち込んだというものではなかったこともあるようだ。
大矢市次郎と、花柳のライバルの柳永二郎とその弟子で悪役の伊志井寛がさすがに上手い。
花柳の妻は、溝口健二の『残菊物語』と同じ森赫子で、この人はぶりっ子声で少し疑問があるが、ここでの無垢な妻役は合っている。
この感応寺の五重塔は、心中放火事件で焼けてしまい今はなく、東京の五重塔は、池上本門寺と上野寛永寺だけである。
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