植木等が死んだ。80歳。
彼の大ヒット映画『ニッポン無責任時代』で、主人公平等(たいら ひとし)は無責任を重ねながら社長になってしまう。そのラストシーンの社長披露パーティーは、昨年閉鎖された横浜プリンスホテルのガーデンである。
カメラが下を向くと崖下は、何もなく一面根岸湾の海になっている。
まだ、磯子の埋立ては始まっていないのだ。
プリンスホテルと言い、植木と言いい、いずれも1960年代文化の終焉を感じる。
彼の、「ぶワーッと行こう」と言う調子の良い演技には、大変な解放感があったと思う。
言うまでもなく、「分かっちゃいるけどやめられない」は、確かに永遠の真理である。
植木等の映画というと「無責任シリーズ」ばかりだが、豊田四郎監督の傑作『如何なる星の下に』も是非放映してもらいたい。
この中で、植木は急に売れ出した歌手で、池内淳子を捨て、池内は自殺する。
インテリで主人公池部良の前妻淡路恵子の二度目の夫になったが、女にだらしない(淡路に言わせれば「女を喜ばせる方法を知っている」)男で、主人公山本富士子の妹で日劇のダンサー大空真弓も誘惑しものにして、香港に売り飛ばしてしまう。
そのいい加減さが最高である。
そこには、詐欺師で山本富士子の前夫森繁久弥も出てきて名演技を見せる。