1962年に大映で配給された土居通芳監督作品。スタッフ、キャストは旧新東宝系の人なので、新東宝で製作されていたものを倒産後に、大映で公開したものだと思う。
特に優れたものではないが、テンポの良い土居の演出が快い。
話は、検事の宇津井健をめぐるもので、彼は以前福田公子と恋仲だったが、なぜか「あと一歩の言葉と行為」ができず、福田は日本産業という大会社社長近衛敏明の妻となっている。
その福田の妹が大空真弓で、密かに宇津井を恋しているので、この嫉妬が原因で事件が起きるのかと思うと実は、さにあらず。
宇津井は、不良少年・少女グループの捜査を担当していて、それが高宮啓二と万里昌代。
この辺の感じは、山際永三監督の『狂熱の果て』の不良グループものにも似ている。
宇津井の上司の検事が清水将夫で、彼は贈収賄容疑で近衛を捜査していて、彼と料亭で会うが、その場で逆に近衛から、「秘密を握っているぞ・・・」と脅されてしまう。
そして、近衛が毒殺される。
宇津井は、捜査を担当し、初めは不良少年・少女グループのリーダーの高宮かと思うが、彼にはアリバイがある。
清水も疑うが、彼ではなく、なんと万里昌代は彼が「若き日の過ち」でできた娘だった。
そして、宇津井は福田公子を犯人と思い込み、彼女を調べるとすぐに自白する。
だが、すでに伊東の宿で福田との愛を確かめていた宇津井は、「君が出てくるのを待っているから、結婚しよう」と言う。
ここで終わりかと思うと、なんと犯人は大空真弓で、「嫉妬」からではなく、彼女も、近衛にいやいや性交させられてしまったので、近衛を毒薬で殺害したのだ。
近衛敏明は、松竹以来からの二枚目だが、この時期の新東宝には出ていて、好色親父が専門だったが、私は好きな役者である。意外にも品があるからである。
彼は小津安二郎の『戸田家の兄妹』、溝口健二の『西鶴一代女』にも出ている。
衛星劇場