『ファニーとアレクサンドラ』

イングマル・ベルイマンの5時間の大作で、絶対に眠るなと思っていたが、非常に面白くて楽しめた傑作だった。もとは、テレビのシリーズ作品だったが、それを5時間に再編集したもの。

年代は多分、1870年代でスエーデンで劇場を持つ裕福な一族エクダール家の話。

1870年代と推測するのは、電気はあるが自動車はなく、さらに祖母が過ごす夏の別荘にエジソンの蝋官式蓄音器が置かれていたこと。これはその頃に、ベルリーナのSP,さらにLPに繋がる円盤式のレコードに代わるのだから。推測では、初期の蝋管式蓄音には役者の声を録音した物も結構あったので、元は女優だった祖母も、他の俳優の録音を愛好していたのかもしれない。

さて、題名の少年アレクサンドラも妹の少女ファニーも物語の中心ではなく、彼らの母エミリーの物語である。彼女は俳優のオスカルと結婚して女優を引退していたが、オスカルは『ハムレット』の稽古中に脳梗塞で急死してしまう。

オスカルは劇場は続けてくれと言い残して死ぬが、エミリーの悲しみに漬け込み、教主の男がエミリーに求婚して結婚し、住まいも15世紀に建てられたという主教館に引っ越してしまう。

こいつが実に嫌な奴で、ケチで子供たちに暴力的な圧力を与える。もともとのエクダール家の屋敷の内部の調度、家具等は実に豪華なもので、当時のブルジョワの豊かさが楽しめるが、今度の主教館には家具調度は全くなく寒々しい。ピューリタンの生活は質素で厳格なものだつたのだろう。

子供たちの帰属については、教主とエクダール家の間に争いがおき、そこでの互いの弁論も実に見事で、まるでジロドーの『かもめ』の宗教裁判での弁論を思わせる。最後は、子供を箱に入れて持ち出して実家に取り戻され、主教は火事で焼け死んでしまう。

エミリーは、主教との間の双子の娘を産むが、そのお祝いの直後、祖母もストリンドベリの新作に出ることが決まってエンド。

実に幸福な気持ちになった映画だった。

横浜シネマリン

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする