『眠狂四郎・無頼剣』

今では、市川雷蔵の代名詞になっている眠狂四郎だが、実は最初に演じたのは雷蔵ではなく、鶴田浩二である。

しかし、今見てみると雷蔵は、狂四郎にぴったりであることがわかる。雷蔵は何といっても台詞が非常にいいし、立ち姿も美しい。

ただ、雷蔵の欠点は殺陣で、下半身が弱くて、よく見ると腰がフラフラしている。

いきなり、香川良介が脅されていて、さらに大商人の屋敷が大騒ぎになっているが、雷蔵に工藤堅太郎がいろいろと説明している。眠が、「なぜそんなに知っているのだ」と聞くと、工藤は屋敷渡りの髪結いなので、屋敷の事情を知っているのだとのこと。

そして、ある大店から盗んできた日本酒を居酒屋で飲もうとするとにおいがひどく、土間に捨てる。

狂四郎が、タバコの火種を投げると、火が付いて大きく燃上る。クソウ水、つまり原油で、その裏には新潟の原油を精製して灯油にし、菜種油に代えようとするたくらみがある。

それを二つの連中が争っていて、一つが天知茂が率いる大塩平八郎の残党である。また、遠藤辰雄をリーダーとするやくざ的な連中も追いかけている。長崎のオランダの技術で原油を上手く精製しようとしているわけだが、確かに当時の油は菜種が中心で石油の使用は多くなかったのだ。大塩平八郎の息子を演じる天知茂が非常に良いが、眠をまねして円月殺法をするのが笑える。

この辺の庶民生活や習慣などについては、非常に詳しく、さすがは伊藤大輔の脚本である。

日本映画史に残る大監督の伊藤大輔も、戦中期に所属していた日活が、永田雅一の謀略で大映に合併されたために、以後内田吐夢らと共に、日活にいた連中は不遇で、戦中から戦後の監督作品は正直に言ってあまり面白くない。逆に永田の子飼いの新興キネマの森一生らは厚遇だったようだ。よくある大企業を何らかの理由で小企業が飲み込んで合併した時、大企業の連中が被る被害の典型というべきだろう。

ただ、戦後も伊藤の脚本は大変に面白く、市川雷蔵主演、森一生監督の『薄桜記』は大変な傑作だが、これも非常に良いと思った。

日本映画専門チャンネル

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする