『天使も夢を見る』

川島雄三の松竹時代の特集、1951年の監督作品。
製薬会社の野球部の鶴田浩二と佐田啓二、ノンプロで都市対抗戦に出るくらいのレベルらしい。
だが、因業な社長の河村黎吉は、「あんなマリ叩き」と野球が嫌い。
毎日決済書類を社長の邸宅の葉山に取りに行き、そのまま宿直をするという信じがたい会社。
一人娘は津島恵子で、大会社の御曹司細川俊夫との見合いを奨められているが、津島は細川が嫌いで、鶴田に偽の恋人になってくれといういつもの筋書きで、そこから二人の恋が進む。
一方、佐田は、グランドから出て隣家に飛んだボールを探すと、戦前に幼なじみだった幾野道子に遭遇する。
母の坪内美詠子が寝ついていて、今佐田が勤務している会社の名を出すと、河村の名を知っている。
そう、坪内・幾野親子は、別れた河村の妻子だったのだ。
実に偶然といい加減さのみのシナリオで、川島がよくこんな程度のもので撮ったものである。
この頃、助監督で川島に付いていた今村昌平は、聞いたことがあるそうだ。
「川島さん、なんでこんな映画を撮るのですか、もう少しましなものをやったらどうです」
川島は即座に言った。
「金のためです」

天使とは、津島恵子のことで、天使のように初で汚れなき娘も夢を見るのだそうである。
幾野道子は、SKD出身で、戦後日本最初の接吻映画を演じた女優である。
津島から見れば、やや堕天使に見えたのだろうか。

鶴田、佐田らが野球の練習をやっているグラウンドは、どうやら渋谷の近く南平台辺のようだ。
バス停が鉢山になっていた。
このへんは、当時は全くの郊外である。
衛星劇場

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